選擇寺について
選擇寺の歴史
天正2年(1574年)、戦国の世に行誓覚公和尚によって創建された選擇寺。450年という長い歴史の中で、この寺院は時代の変遷を静かに見守り続けてきました。
江戸時代初期には住吉の妙圓寺の末寺となり、浄土宗の教えを広める拠点として発展。「選擇」の名前が示すように、悪を除き善を選び出すという阿弥陀仏の慈悲の教えを体現してきました。江戸時代から明治時代にかけては、博多柳町遊郭の檀那寺として特別な役割を担いました。社会の片隅で懸命に生きた580名もの遊女たちを、身分や境遇を問わず慈悲深く迎え入れ、多くの魂に安らぎを与えてきたのです。現代においても、その慈悲の心は変わることなく受け継がれ、すべての人々に開かれた祈りの場として、博多の地に根ざし続けています。
縁結び

選擇寺の「選擇」には、数ある中から最良のご縁を選び結ぶという深い意味が込められています。境内に静かに眠る雪友さんは、文久元年(1861年)、わずか19歳でこの世を去った遊女でした。亡くなった母への想いを胸に、懸命に生きた彼女の物語は、真心ある愛の大切さを今に伝えています。雪友さんの純粋な心と深い愛情は、良縁を願う多くの方々の心に響き、いつしか縁結びの象徴となりました。毎年6月27日の「紫陽花忌」では、雪友さんと共に過ごした多くの魂たちへの供養が営まれ、参拝される方々の良縁成就への祈りも捧げられています。真心ある出会いと、末永い幸せを願う方々に、選擇寺は静かな祈りの場を提供し続けています。阿弥陀如来様の慈悲深いまなざしのもとで、あなたの大切な縁が結ばれますように。
文化財本尊阿弥陀如来像
本堂に安置される木造阿弥陀如来立像は、選擇寺が誇る貴重な文化財です。高さ119.4cm、檜材による寄木造のこの美しい仏像は、平安時代後期の優れた彫技を今に伝えています。広めの瞼に前方下方を見つめる慈悲深い伏目、円満な顔立ちと頬のふくよかなふくらみ。浅い彫りで流れるような美しい衣線文は、見る者の心を深い安らぎへと導きます。肉身部に施された漆箔と、頭髪・法衣の彩色が織りなす荘厳な姿は、まさに平安の美意識の結晶といえるでしょう。行基菩薩の作と伝承されるこの仏像は、実際には京都や奈良の中央仏師による作品と考えられ、福岡市に現存する数少ない平安時代仏像彫刻の優品として、高い文化的価値を有しています。450年の長きにわたり、この慈悲深い阿弥陀如来様は、訪れるすべての人々を温かく見守り続けておられます。
五大力菩薩

選擇寺に祀られる五大力菩薩は、忿怒の形相で人々を守護する五体の菩薩様です。金剛吼・龍王吼・無畏十力吼・雷電吼・無量力吼の五菩薩から成り、火難・水難・盗難を免れ、富を招く強力なご利益で知られています。江戸時代の慶長11年(1606年)1月11日、店屋町の商家で帳祝いが行われていた際、見知らぬ老翁が五体一組の菩薩像を残して立ち去りました。その夜、店主の夢枕に阿弥陀如来が現れ「この菩薩像を選擇寺に祀ってほしい」とのお告げがあり、以来この地に鎮座されています。毎年1月11日には「五大力祭」が執り行われ、商売繁盛、事業成功、災害除け、厄除けを願う多くの参拝者で賑わいます。現代においても、人生の困難に立ち向かう方々の心強い支えとして、変わらぬ信仰を集めています。
御朱印とお守り

選擇寺では、450年の歴史を持つ浄土宗寺院として、参拝の記念に御朱印を授与しております。「本願山選擇寺」という寺号には、すべての魂に等しく慈悲を注ぐという寺院の精神が込められており、参拝の思い出として心に残る一枚となることでしょう。御朱印は、単なる参拝の記念ではなく、仏様との尊いご縁を結んだ証でもあります。一筆一筆に込められた祈りとともに、選擇寺の長い歴史と伝統を感じていただけます。また、選擇寺では健康祈願、開運厄除御守、交通安全御守など、様々な種類のお守りを取り揃えております。それぞれのお守りには、450年の歴史の中で培われてきた祈りと慈悲の心が込められており、日々の安全、心身の健やかさ、人生の転機における守護として、皆様のお役に立てることを願っております。大切な方への贈り物としても、ご自身のお守りとしてもお持ちいただけます。
たぬきの御利益

境内でひときわ参拝者の目を引くのが、愛らしいたぬきの像です。この「たぬき」には「他を抜く」という縁起の良い意味が込められており、学業成就、就職成功、試験合格など、競争に打ち勝つ強いご利益があるとされています。受験を控えた学生の方、資格試験に挑戦される方、就職活動中の方、昇進を目指すビジネスパーソンなど、ライバルに差をつけたい方、目標を達成したい方は、ぜひこのたぬきの前で心を込めて手を合わせ、ご祈願ください。笠を被り徳利を抱えた福々しい姿は、どこか人間味があり親しみやすく、参拝者の心を和ませてくれます。しかしその温かな姿の中には、困難を乗り越え目標を達成するための強い力が宿っているのです。たぬきに祈願される方、写真を撮って待ち受けにされる方など、それぞれの方法で「他を抜く」願いを込めて祈りを捧げる姿が見られます。選擇寺のシンボルとして、これからも多くの方の夢と願いを見守り続けます。
アクセス
〒812-0035 福岡市博多区中呉服町9-21